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『オフィーリア』()は、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレー (John Everett Millais)による絵画であり、1851年から1852年にかけて制作された。ロンドンにあるテート・ブリテン美術館に所蔵されている。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の登場人物であり、デンマークの川に溺れてしまう前、歌を口ずさんでいるオフィーリアを描いている。この絵は初めてロイヤル・アカデミーに展示されたときには広く評価されなかったが、その後その美しさや自然の風景の正確な描写が賞賛されるようになった。 == テーマと要素 == この絵はちょうどオフィーリアが溺れる前、歌いながら川に浮かんでいる姿を描いている。このシーンは『ハムレット』第4幕第7場で王妃ガートルードのせりふの中で表されている。〔"Millais Ophelia: Behind the painting ". Retrieved on 16 January 2008.〕 描かれたエピソードは舞台上では見られず、ガートルードのせりふにのみ存在する。 :「(前略)すてきな花輪を、垂れた枝にかけようと、柳によじ登ったとたん、意地の悪い枝が折れ、花輪もろとも、まっさかさまに、涙の川に落ちました。裾が大きく広がって、人魚のようにしばらく体を浮かせて―――そのあいだ、あの子は古い小唄を口ずさみ、自分の不幸が分からぬ様子―――まるで水の中で暮らす妖精のように。でも、それも長くは続かず、服が水を吸って重くなり、哀れ、あの子を美しい歌から、泥まみれの死の底へ引きずり下ろしたのです。」〔シェイクスピア『新訳 ハムレット』河合祥一郎訳、角川文庫、2002年〕 オフィーリアの死は、文学の中で最も詩的に書かれた死の場面の一つとして称賛された〔一つの称賛の例はヘンリー・N・ハドソンが編集し、1856年にジェイムス・マンローとその会社によって出版された『シェイクスピア全集』の第11巻(ハムレットは第10巻)にみられる。「この優美な文章は称賛に値する。作者の目を私たちに与え、物事をそれ自体より上手く説明するのに詩の力以上に優れたものはない。」〕。 腕を広げ、目線を上にあげるオフィーリアの姿態は、伝統的な聖人や殉教者の肖像に類似しているが、エロティックであるとも解釈された。 この絵は自然の生態系の栄枯盛衰を強調している、精緻な川や川岸の花の描写で知られている。名目上デンマークの情景にもかかわらず、その景色は典型的なイングランドの情景であると見られるようになった。実際『オフィーリア』はグレーター・ロンドンのサリー州内、トルワース付近のホグズミル川の川辺で描かれた。オールドモールデン近くの居住者であるバーバラ・ウェブは多くの時間を費やして、この絵画の正確な場所を見つけた。彼女の調査によると、その景色はオールドモールデンのチャーチロード沿い、シックスエーカーメドウの中にある〔 For a description of Webb's findings, see . "Mystery of location of Millais' Ophelia solved", ''The Daily Telegraph'' 〕。今はその近くにはミラリス・ロードがある。ミレーの親しい同僚であったウィリアム・ホルマン・ハントは当時、その近くで『雇われ羊飼い』の制作をしていた〔.〕。 川の上に浮かんで見られる花は、シェイクスピアによるオフィーリアの花冠の描写に一致するように選ばれている。それらはまたヴィクトリア朝の、それぞれの花が象徴的な意味を伝えるとされる花言葉の趣向も反映している。人目を引く赤いケシは、シェイクスピアはこの場面の説明では言及していないが、眠りと死の象徴である〔"Millais's Ophelia ". Tate Gallery Online. Retrieved on 16 January 2007.〕。 髑髏が川岸の木の葉の中に描かれている、とよく主張されるが、ミレーによって意図されたとする現存する証拠はない。しかし、自然に形作られた髑髏はハントによって、同じくシェイクスピア作品から着想を得た『雇われ羊飼い』の中で明白に使われ、髑髏に似た模様が背中にある欧州産スズメガが描かれている。 この絵画を制作する初期の段階で、ミレーは助手がホグズミル池で釣ってきたミズハタネズミをオフィーリアの隣に描いていた。1851年12月、彼はホルマン・ハントの親戚に未完成の絵を見せた。彼は日記に記している。 :「ハントのおじとおばが来て、2人ともミズハダカネズミ以外のすべてのものを容易に理解してくれた。おじはそれが何に見えるか問われたとき、野ウサギであると張り切って答えた。彼は私たちの苦笑から自分が間違えたことを感じ、次にあてずっぽうでウサギと言った。その後でわたしは、犬や猫といった答えに対してわずかな訂正をした。」 ミレーはミズハダネズミを除外して絵を完成させたが、そのラフスケッチは額に隠れたキャンバスの上の角に存在している〔。 ミレーは加わっていたラファエル前派の信条に従い、明るい色を使用し、細部に細心の注意を払い、自然に忠実であるようにした。このオフィーリアにおける色彩の演出は、ラファエル前派の様式の典型的なものである。というのも、まず第一に主題となる対象として、幸福を切に願いながら生活するが、死の際になって自分の運命に気が付く女性を描いていることがある。か弱い女性はラファエル前派の画家たちに人気のある主題であった。また、ミレーは明るく、鮮やかな色を背景に使用し、青ざめたオフィーリアを背景の自然と対比させている。これらのことはすべて、オフィーリアの周りの茂みや木々への生き生きとした細密描写への配慮、彼女の顔の輪郭、そして彼女のドレスに行ったミレーの複雑な描写から明らかである。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「オフィーリア (絵画)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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